「ボクシングを始めて、今」 

            会津工業高等学校ボクシング部3年 遠藤広大

 僕は、今年8月、灼熱の太陽が降り注ぐ下、茨城県竜ケ崎市で行われたインターハイで優勝してしまいました。
 僕がボクシングを始めたのは、高校に入学してすぐでした。なぜ?と問われてもはっきりとは答えられないけれど、「何かをやってみたかったから」という適当な気持ちで入部したのを憶えています。
 練習内容はとても厳しく2・3ヶ月で半分程の部員が辞めていきました。僕も何度か辞めようと思い部活をさぼる回数も多くなっていました。でも2年生になると部活に通い始め、練習もしっかりやるようになりました。他の部員に負けたくないと考えるようになり、この頃からボクシングが楽しくなり、どうしたら強くなれるだろう、パンチが当たるだろう、と毎日考えていました。
 その年の6月、インターハイ予選の県大会があり、まだ2年生だった僕は決勝まで残りましたが相手は1つ上の先輩でした。今まで先輩と試合をしたことがなかったのですごく緊張しましたが、僕は判定で勝つことができました。これで初のインターハイ出場を果すことができました。しかし、インターハイはそんなに甘くなく、全国のレベルを思い知らされとても悔しい思いをして帰ってきました。
 次に行われた国体の県予選でも優勝、その次の東北大会で入賞を果し、国体出場権を得ることができ、みんなとても喜んでいました。
 国体では、僕はすでに全国のレベルがどの位かをわかっていたので周りの仲間ほど緊張はしませんでした。1回戦、2回戦、3回戦と危ない場面もありましたが勝ち進んでいきました。準決勝あたりから自信もついてきて気合も入ってきました。
相手は夏に行われたインターハイのチャンピオンでしたが、勝てると思っていたから僕は恐れませんでした。しかし、拳を交えてすぐにこの人の強さがわかりました。
手も足も出ず試合は終わり判定フルマークで負けました。この時、国体3位入賞という好成績に対して、皆が「すごいよっ」って喜んでくれましたが、僕自身は素直に喜べませんでした。とても悔しかったです。
 冬が過ぎて先輩達は部活を引退し、卒業していきました。その時はもう僕が部長になっていて皆を引っ張っていました。この頃になると会津工業という名前が、だんだん有名になってきていました。県内では無敵で、インターハイ予選では会津工業から3人も優勝者が出て東北大会、インターハイへ進めることになりました。この時、みんなすごい自信がついていました。


 東北大会決勝戦、優勝間違いなしだろうと自信満々でリングに上がりましたが、試合が始まると予想外の展開で初めから終わりまで接戦でした。終わりのゴングが鳴った瞬間、「ぎりぎり勝ったんじゃないか」と、心の中で思いました。しかし、結果はまさかの負けでした。しかも2年生にです。信じられませんでした。悔しすぎて涙が止まりませんでした。   
それから僕はインターハイに向け練習を一からやり直しました。もう負けるのはいやだったからです。
 インターハイが始まり、会津工業の仲間も福島県の仲間もそれぞれの階級で皆必死に戦いました。僕はシードで2回戦、3回戦、4回戦と勝ち進みました。中には厳しく危ないぎりぎりの判定もありましたが、準決勝は問題なく勝ち決勝進出を果しました。決勝の相手は以前戦ったことがあり、その時は勝っていました。しかし、油断はしませんでした。
 試合が始まり、1、2ラウンドはペース争いでお互いにパンチはあまり当たっていませんでしたが、判定では多分負けていたでしょう。ラストラウンドが始まる前、セコンドの富樫先生に「決めて来い」と渇を入れられ、気合が入りました。最初はお互いに距離をとっていましたが、僕は突っ込み、パンチを出していました。当たった瞬間、いけると思いラッシュをかけました。手応えのあるパンチが何発か当たりましたが、相手は倒れませんでした。そのかわり相手は目の下から出血し、いったん試合が止まりました。相手の目の下からはまだ血が出ていましたが試合は続行され、チャンスはもうないだろうと思い、すぐラッシュをかけました。またもパンチが当たり相手はかなり効いていました。「倒してやる」と思った瞬間ゴングが鳴りました。
まだ勝負は発表されていませんでしたが、僕は拳を強く握りました。判定は僕の勝ちで、その瞬間ガッポーズをし、富樫先生と抱き合いました。とても嬉しくて涙が流れてきました。あの時の嬉しさは今でも忘れません。
 インターハイでこんな素晴らしい結果を残せたのは、富樫先生はじめ学校の先生方、家族、友人達のおかげだと思います。とても感謝しています。でも今思うと、「本当に僕がチャンピオンでいいのかな」と思うことがたまにあります。なんか実感がわかないというか…。だからこれからもっと練習して、勝って勝ち抜いて強くなって、「自分はチャンピオンなんだ」という実感をもてるようになりたいです。そして秋に行われる国体でも優勝したいです。


 <プロフィール>
【生年月日】昭和59年5月18日
【出身】会津若松市
【経歴】一箕中学校卒業
【主な実績】平成14年度全国高校総体ライトウェルター級 優勝

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